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僕たちはスーパージュニアです 28

2011年10月10日 18:15

画像21

せっかく仲良くなったふたりなのに、

ドンヘの病気がこれから

深刻な問題になっていくのです。
28. 死の影


病室の中にはヒョクチェとドンヘがふたり、囁く声だけが聞こえた。ヒョクチェが何か言えばドンヘはきゃっきゃと笑った。そしてその次には、またドンヘが話を続き始めた。ふたりは誰が見ても暖かな恋人同士だった。大衆の前で見慣れたスーパージュニアのメンバーではなく、お互いを考え、大切にするそんな恋人同士……。
「中国生活はどうだった?」
「始めは……なぜかジュアンというメンバーがいるだろ。仲が悪かったんだけど……」
「何? 仲が悪い? おまえを苦しませているんじゃないか? 殴ったか!?」
 突然厳しい表情で深刻になったヒョクチェの顔を見たドンヘの唇があがった。相変わらず単純なやつ。俺の前にいるおまえが本当にイ・ヒョクチェだということだ。興奮しているヒョクチェヲなんとかなだめて席に座らせたが、まだ納得がいかないらしく息巻いている。違うと何度言っても、到底ドンヘの言葉は耳に入らないようで、何の罪もないジュアンの名前ばかり呼んだ。
「ところで……俺、どこか悪いの? 点滴も全部したのに退院しないの?」
「わからない」
「ええ? わからない……?」
「おまえが倒れてコンサートがどう終わったのかもわからないくらいあわてて終わりの挨拶をして、すぐに病室の走ってきたんだ。そして今はこうしておまえといるだろ」
「……コンサート、まともに終えなきゃだめだろ。ファンたちとの約束なのに」
「ファンたちとの約束? ああ……それを一番先に破った人間はだれですか」
 ヒョクチェの手がイ・ドンヘの頬に向かい軽くつねると、 ドンヘの顔がしかめられた。不細工な顔をしかめるなよ。いたずらっぽいヒョクチェの言葉にドンヘがよけいに膨れる。そんなに久しぶりにやってきた幸せを感じている頃、病室のドアが開かれ、ギュワンが入ってきた。その間、余計に泣いたのか、両目が開けるのが大変なくらいにふっくら腫れていた。
「ギュワン……おまえ、目、どうしたんだ……!」
 慌てたドンヘの叫びにギュワンがただにやりと笑った。ギュワン……もう一度ギュワンを呼ぶドンへの声に、ギュワンの目から一筋の涙が流れた。突然ギュワンの行動にドンヘは不安だった。何かわからない恐怖が自分の背後に襲ってきているような気がした。「……ドンへヒョン」
 苦労してドンヘを呼ぶギュワンの声が震えだした。ドンヘの名前を果てしなく呼びながらドンヘのほうに歩いてくる彼の片手をぎゅっと握り締めた。汗に濡れたギュワンの手がイ・ドンヘに伝わった。
「ヒョンは、本当に俺が認める最高の歌手……」
「おまえ、本当にどうしたんだ、ギュワン」
「俺が好きで、俺が一生尊敬する人……」
「何があった……」
「中国でヒョンにあったとき、どれだけ嬉しかったかわかる? 俺がどれだけヒョンを頼って信じてついてきたかわかるでしょう……?」
「うん……わかってる……」
 言葉を続けられないギュワンの目がまた赤くなった。
ギュワンはドンヘを見ながらぼんやり笑った。ヒョン、患者服は本当に似合わない。ヒョンも似合わない服があるんだね。ギュワンは自分の隣にある壁に身体をもたれた。もたれるなりギュワンの身体は壁に沿って力なくゆっくりと崩れてしまった。
「中国であった思い出、忘れられないよ。練習しながら疲れた俺の肩を慰めてくれながら起きろと言ってくれたことも、わがままで自分以外に知らないジュアンヒョンを説得させたことも、そして……さっきコンサートで俺たちのために怒っていたヒョンの姿も、ファンに向かってお礼をしていたヒョンのすがたも……」
「俺、そんなに悪いのか……」
 ギュワンに投げかけるドンヘの質問が、その声がひどく震えだした。そんなドンヘにギュワンはもう一度ぼんやり笑って見せた。笑う彼の目からは止まることを知らないとめどない涙が流れていた。
「ヒョンがスーパージュニアでいなきゃならないのにChina Juniorになってしまって、俺たちの思い通り変わってしまって、神様がお怒りになったらしい……」
「……」
「だから、その怒りを解くために、空にいる天使たちがコンサートをしたのに……あの遠い空でコンサートが開かれたのに……」
「……」
「神様が天使たちに聞いたらしい……この世界で一番素敵な歌手が誰なのか……」
「やめろ……」
「そして天使たちが答えたんだ……イ・ドンヘです……。それですぐにその子をお呼びになったんだ……」
 ヒョン……ドンヘヒョン。ギュワンは何度泣くのを我慢したかわからないくらい涙を我慢し続け、この話を、あまりにも悲しいこの童話を続けた。涙を我慢しているせいか、両目が余計に赤くなり、手をぎゅっと握りしめて、爪にひっかいたのか血がにじんでいた。
「……コンサートを開け……俺の怒りを解くためにはコンサートを開け……」
「どれだけ……つらいのに……」
「天使たちがヒョンを連れて行くその日……ヒョンは……空の天使になって歌を歌うんだ……」
 話を聞いていたヒョクチェがギュワンの胸倉を掴んだ。最大限力を入れて掴んでいたのに、ヒョクチェの手にも力が入らないのか、その胸倉を自ら話してしまった。床に倒れて倒れるギュワンを無理に立たせて、病室から引きずり出した。三人だった病室からふたりが出ていき、病室の中は静かだ。だけどすぐにひとりの男の泣き声がその静かさを満たした。
ヒョクチェ、俺はすごく怖いよ……。俺たちこんなふうにまた苦労して再開したのに、また別れることになったらどうしよう。本用にそんな状況になってしまったらどうしよう……。
 また自分の体の中にある全ての臓器がぐちゃぐちゃになって狂うような痛みが始まった。トイレに駆け込もうとベッドから降りようとしたが、重心を失い、そのままベッド〜落ちてしまった。今、こんなにひどい苦痛を経験していながらも、俺はイ・ヒョクチェが病室を出ていったことをありがたいと思っていた。彼の前では絶対にこんな姿を見せたくはなかった。自分で見てもむごい……自分で見ても汚い……。
「ううっ……ふっ……うっ……」
 トイレに入る前に病室の床に全て吐いてしまった。弱った俺の身体は、もう病室の中にあるトイレに行く力さえも失っていた。どこから間違ったのか考えてみた。いつから痛かったのか考えてみた。韓国にいるとき、中国にいるとき、そして韓国にまた戻って来た時……そう言えば俺はたびたび腹が痛くなることがあった。それを俺を、幼い頃に患った消化不良だと思っていた。そこから間違っていたようだ。あのとき検査を、受けていればよかったのに……。
 弱い自分が滑稽で嫌で、むかついた。俺だけが苦しんで生きているわけでもないのに、世界には俺よりももっと不幸な人たちがたくさんいるのに。我慢できない自分の姿に腹がたった。もう幸せになろうと思っていたのに、突然死んでいこうとする自分の身体が、自分の心が恨めしかった。
「……ヒョクチェ……」
俺は今、誰よりもおまえが必要だ……。
「イ・ヒョクチェ……」
 おっても痛くてつらくて一人ではあまりにも寂しすぎるんだ……。
「イ・ヒョクチェ!!!!!!!!!」
 ここは中国じゃない韓国なのに、どうして呼んでも答えがない……。さっきまで俺の隣にいたのにまたどこに消えてしまったんだ。俺は突然理由もわからない不安に怖くなった。少しイ・ヒョクチェと一緒にいただけなのに、またイ・ヒョクチェが目の前から消えると俺は怖くなり、不安になった。ベッドノシーツで床をほとんど拭き、顔に付いた吐瀉物も拭いた。そして病室を出て、廊下を狂ったように走った。迷路に閉じ込められて見えない出口を探すかのように、どこにいるのかわからないイ・ヒョクチェに向かって走りまくった。


*


「どうして……今になってきたんですか。もう胃がんのステージ4です。患者の方が痛いと言いませんでしたか? 腹部にあったその苦痛は、薬なしでは耐えがたいものだったはずですが」
「鎮痛剤を飲めばすぐによくなって、だから……」
「鎮痛剤ですか? 医者の処方もなく鎮痛剤を使用なさったのですか?」
「いえ。中国で……マネージャーヒョンがくれた……」
 ギュワンと医者が話をしている間にもヒョクチェは何も言わなかった。胃がんステージ4という言葉が、イ・ヒョクチェの耳に入ってきてから、彼はその場所で微動だにしなかった。
「胃がんステージ4を他の言葉で申し上げますと、胃がん末期。生存率も5〜10%と希薄です。それにがんが既にリンパ腺まで転移していたら、状態は言葉で表現できないくらいに深刻です」
 医者は検査をしたカルテとがんの塊が撮影されているX-rayを見せながら、丁寧に説明した。しばらく見ていたヒョクチェはうつむいて、椅子に座ってしまった。何もなかった彼が顔を上げて医者を見て、口を開けた。
「手術、それは……手術すればいいんじゃないんですか」
「ステージ3での手術も深刻に考えなければならない問題なのに、今患者の方は胃がんステージ4です。手術すれば手術中に患者さんの生命は我々に保証できないし、そして快復するかどうかも確実には答えられません。それにさっき申し上げたように、リンパ腺までがんが広がって……」
「くそ、俺はそんなもの知らないから!! 手術……手術をさせてくれって!!!」
 自分の前におかれていた椅子を足で蹴り飛ばし、医者に向かってヒョクチェが叫んだ。医者はこんな状況をたくさん経験してきたと言うように、慌てた様子ひとつ見せず、ただ冷静だった。多分、たくさんのがん患者の家族たちがこうだったのだろう。医者はずり落ちた眼鏡を持ちが絵、もう一度言葉を続けた。
「遅くなる前に抗がん治療を始めなければなりません。今からでは、抗がん治療が最善の方法です……」
「そうすれば生きられるんですか?」
 さっきよりは柔らかい口調でヒョクチェが聞いた。今までさくさく答えてくれていた医者がしばらく答えなかった。
「今よりもう少し延命が……可能です。だけど末期に完全回復した患者は、海外にはいくつか症例がありますが、奇跡とお思いになってください」
 廊下を走ってきた俺は、ドアが開かれて部屋からヒョクチェの声を聞いて、その部屋に入ろうとドアノブを掴んだ。しかしすぐに聞こえてくる医者の言葉に、ドアノブは力なく手から離れた。話を聞いていた俺の心臓が音を立てて座りこんだ。俺が……末期がんだって。他人のことだと思っていた、想像でも敢えて一度もしたことがなかった「胃がん」だというのが俺の病名だということだ。そして医者は他の誰でもない俺の病気について、ヒョクチェに説明していた。なんでもないように、同じ口調で……あまりにも淡々と。ヒョクチェは始めはその話を聞いて怒っていた。文句を言って、医者を放りつけながら、医者に怒った。そしてヒョクチェは涙を流した。医者を涙いっぱいの両目で見つめてた……最後にイ・ヒョクチェは跪いた。
「私が、スーパージュニアだと……医者の先生はよくご存知ないかもしれないけれど、多分娘さんがいらっしゃったらその子は知っています。僕たちスーパージュニアが……少し有名なんですよ? お望みならこの病棟を回ってサイン会もしますから。病室の子供たちのためにコンサートを開らけというならやりますから。それでもだめなら、病院の広報大使をしますから……」
 医者のズボンの裾を掴み、ヒョクチェは嗚咽した。その足に顔をうずめ、叫びながら涙を流した。俺は初めて見るヒョクチェのそんな姿に、心の片隅が切られるように痛んだ。
「イ・ドンヘを……助けてください……彼を……あちこち振り回されて……全身に、全身に傷が多すぎてこれ以上傷つく場所もないような子なんですよ。ばかみたいにひとり辛いことに直面して、彼の心はもう腐り落ちてしまいますよ……」
「イ・ヒョクチェ…!!」
 俺のために哀願し、嗚咽する彼をもうこれ以上見ていられなくて、ヒョクチェの名前を呼びドアを開けた。俺の声が明らかに聞こえているにも関わらず、ヒョクチェは振り返ることもなく自分の言葉を続けた。
「私が……今日になって自分の場所にまた戻ったんです。まだしなければならないことがすごく多いんです……。ずっとできなかったことが多いんです……。それが死ぬときまでに全部やってもできないくらい……すごく多いんです。だからこんなふうにつれていかれたらだめじゃないですか……こんなふうに突然は……ひどすぎるじゃないですか……」
「ヒョクチェ……」
「私がこの子に死んでしまえと言った言葉、もしかしてそれのせいで連れて行かれるのなら、それは本当に本気じゃなかったのに……それは本当に僕の本当の気持ちではなかったんですよ。本当はイ・ドンヘが……私にとってひとつしかない……大切なひとなんですから……」
「どうか……」
「うぅ……一度……だけ……うぅっ……助けてください……」
 ヒョクチェを無理に立たせようとしたが、無力な俺の腕が彼を立たせられうrはずがなかった。ヒョクチェは言うことを聞かなかった。頑として叫び、泣き……哀願し。既にこんなことにも慣れてしまっている医者も涙を流していた。初めて会う人も、俺にとってもとても慣れている人にとっても、人の死を認めるということはとても辛い現実だった。
「……私が何をすれば……生きられるんですか……?」
 立とうとしないヒョクチェの隣で、俺は膝をついた。既に目の前がぼんやりとして見えるものはなかった。唯一、お医者さんの黒い服……ズボンの裾だけが見えた。ヒョクチェがしていたのと同じように、俺も医者のズボンを掴み……嗚咽した。本当わざとこうしようとしたのではなかったが、目の前に見えるものがなくて、そんな行動をとるしかなかった……。
「私がよく我慢しますから……それがどれだけつらいかわかりませんが、どうして映画やドラマで見ると主人公が死ぬほど苦しむじゃないですか。それが私がよく我慢すれば……そうすれば助けてくださいますか……?」
「ドンヘヒョン……うぅ……ヒョクチェヒョン……」
「おまえも祈れ……!!! おまえも俺を助けてくれって祈れ、ハン・ギュワン!!」
「ううぅ……ふうぅ……」
「俺たちがこんなに祈っているじゃないですか……私がこんなにお願いしてるじゃないですか……。私はまだ死にたくありません……したいことを全部できていないのに、私は死にたくないんです……」
 死は誰にも知られずに、そんなふうにそっと俺のそばにやってきてしまった。誰も望んでいなかったけれど、暗い死の影はいつの間にか俺の隣にそっとくっついていた。俺はその影を離すこともせずに、むしろもっと大きくしてしまったのだ。誰でもない俺自身が……苦しむ自分をないがしろにして、減ることなく余計に大きくしてしまったのだ。俺の残りの命の糸の消息を知ってからは、死が俺にささやき続けているようだった。こんな医者に祈るこの瞬間も、死は俺にささやいている気がした。お前はこれ以上生きられないのだから、遅くなる前に早く俺の手を掴んで行こう。


コメント

  1. Vooodka | URL | rVevf1aU

    いまはただ祈るだけ

    まさかそんなはずはない、そうでないようにと願ってましたがドンヘ・・・ああ、なんてことでしょう。
    でもでも、愛の奇跡が起こることを祈ります。ふたりならきっと起こせると信じて。

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