2011年09月06日 21:58

14. もう本当にさよなら……
ストーカー……結局はそれが俺たちの脚を引っ張る。ぼんやりした状態のドンヘに、タバコの煙をふっとかけながら席から立ち上がり、ドンヘをソファに座らせて徐々にボタンをはずす。
「おまえは中国版スーパージュニアとして中国進出の準備をしろ。拒否したらこのままスーパージュニアは終わるかもしれない。よく考えるように」
ボタンをはずしながら話をするスマンの唇がにやりと笑い、その鼻地を聞いてはほとんどパニック状態に陥るドンヘは、そんなスマンを拒否する力さえ残っていなかった。
ソンミンヒョンの胸はとても温かく、ひさしぶりに何も考えずに安らかに眠れた。俺は一体何時間寝ていたのか、さっき朝に寝て、起きた時間は夜中の3時くらいだった。
眠ることですべてを忘れたかったようで、俺は約20時間くらい眠ってしまった。本当にこんなに長く寝たの生まれて初めてだった。
けだるい身体をほどきながら、伸びをして隣を見ると、ソンミンヒョンもぐっすり眠っていた。もしかするとソンミンヒョンもこんなに長く寝たのかと思ったが、変わっている服を見るとおそらくヒョンミンヒョンは、起きてまた夕方に寝たようだった。自分の部屋もあるのに敢えて俺の部屋で寝たのは、きっと目を覚ましたときに回りに誰もいないと怖がるんじゃないかと、俺のために配慮してのことだろう。
水でもいっぱい飲もうとへを出たが、ドアの前で何かが俺の脚にひっかかった。一体何かと見てみると、どれだけ酒を飲んだのか潰れてひっくりかえったイ・ヒョクチェだった。
前にもそうだし、今度もそうだが酒を飲まないヒョクチェに原因を提供した俺としては、また罪悪感を感じた。
寝ているイ・ヒョクチェの顔をじっと見つめながら、もう一度わっと咽喉から何かが押し寄せてきた。改めてみると鼻がかなり高くて、まつげも長いんだな、おまえ。肌もきれいだし……かっこいい。俺のヒョクチェ。毎日自分がかっこわるいってぶつぶつ言うけど、こんなにかっこいい顔をしてなんでそんなことを言っていたんだ。手をそっと伸ばして彼の頬を撫でた。あんなにやわらかかった肌がぼろぼろになっては、俺の指先に伝わってきた。
「俺、もう本当に行くよ」
また流れ出す涙が、ヒョクチェの髪を濡らした。泣かないように努力したが、しきりに何かが俺の頬の上を流れ落ちて彼の髪を濡らした。
何も知らない彼は本当にぐっすり眠っていた。これから残った俺の人生を、こんなふうにこの顔だけ見ながら生きていくことも悪くはないと思った。やつの眠っている姿をこんなふうに細かく見るのは、これで二回目だった。一回目は、もしかして忘れるんじゃないかと、俺の頭の中におまえの姿を隅々まで残しておこうとしたのだが、今日見るとまた違う顔のおまえが俺の前にいる。何度刻み付けても、完全なおまえの姿が描けない。俺はそれなりに確実にまた刻み付けた。離れた場所にいても、絶対に忘れることがないように……。
俺は今、時間が止まってずっと朝がこなければいいと思った。朝になったらすべてが変わり、俺のそばにいる人々のそばを離れ、遠い場所へいけなければならない。そしてもう、おまえの顔をしばらく見ることはできないだろう。
「ばいばい……」
ヤツの耳に、起こさないように静かに囁いた。
愛していると言ってやれば愛していることを知り……単純で、目に見えるものを信じてしまうこのバカなヒョクチェ……。バイバイ、もう本当にさよならだ――。
突然泣き声が大きな利、ヒョクチェが起きるかと思って目に見える適当な部屋に入って涙を流した。涙に洗われて、ヒョクチェの記憶が全部消えるように祈りながら……。
「うっ……ふぅ……うぅっ……ヒョクチェ……ヒョクチェ……」
ごめん。ごめん……ごめん……ごめん……愛してる。
どうしても最後に伝えられない言葉が俺の中でぐるぐる回っていた。すぐにでも外に飛び出しそうで、両手で口をぎゅっと塞いだ。
「ドンヘ」
泣いていた俺が、誰かと思ってみると、ジョンスヒョンだった。部屋の中を見てみると、俺が入ったこの部屋はジョンスヒョンの部屋だった。はじめから寝てはいなかったらしく、コンピュータをしていたようなヒョンが、泣いている俺を驚いた目で見つめていた。俺が泣くのを止めることなく、部屋の外に出て俺に水を持ってきてくれた。
「飲んで、落ち着け」
その水を受け取り、ごくごく飲むと、ようやく押し寄せてきていた感情が少し落ち着いたきがした。不思議にも、突然また腹の中が痛み出した。それでも前のようにひどくはなかったし、今日は十分に耐えられるくらいの弱い痛みだった。
「何時の飛行機だっけ?」
「7時15分。もう……あと3時間くらいか」
「ふわ……そうか。荷物は準備したか?」
「準備といっても特に……準備するのは着替えくらいだし……事務所が最大限簡単に準備すればいいって。30分後にハンギョンヒョンが乗った車が来るよ。それに乗って空港に行って、手続きを踏んだら……いつの間にか飛行機に乗る時間になっていて、そしたら俺はただ行くだけだから……」
「コンサートはどうすることにしたんだ……」
「コンサートは参加する……その前日に韓国に帰ってくるよ。コンサートのとき、中国メンバーとショーケースをする予定だって。それを起点に始まって、活動を始めるらしい……」
「そうか……」
「笑えない? 俺がスーパージュニアじゃない、別のグループで活動するんだって……。完全に中国版スーパージュニアじゃないか。韓国でのハンギョンヒョンに俺がなるんだ、中国では。残りはみんな中国人メンバーだから」
「……」
「あまりに心配しないで。俺が選んだ道だし……俺が……」
「ドンヘ」
「……うん?」
「ヒョンの前ではそんなしっかりしたようなかっこいい言葉より、おまえの本当の気持ちで泣いてもいいんだぞ」
ジョンスヒョンの最後の言葉に、俺はただ唇をかみ締めた。ああ、こいつの涙の泉は本当に壊れてしまったのか、もう何度目なのか……。
「電話、ちゃんとしろよ……」
「うん……」
「向こうに行ったら泣かないで」
「うん……」
「韓国でよくなかった記憶はみんな忘れて」
「うん……」
「……ヒョクチェのことも忘れろ」
最後までヒョンは……残酷だ。みんな俺のためを思ってのことだけど、その言葉が刃となり、俺の心臓を裂き傷つけるのはどうしようもない。
ジョンスヒョンに頼んで、ヒョクチェをジョンスヒョンの部屋に運んでもらったあと、俺は荷物をまとめるために部屋に戻った。
しばらく海外撮影がなく、そんなに人生で使うこともないと思っていた旅行かばんを取り出した。きちんと自分の下着を入れ、靴下を入れ、服を詰めた。ヒョクチェと撮った写真をかばんの中にいれながら、これは違うと思ってただ写真を抜き、引き出しの上に戻した。あの写真を持っていったら、毎日写真を見るたびにおまえのことを思い出して、逃げ出して泣いてしまうかもしれないから。
「俺がいなくても元気で」
写真の中のヒョクチェに一度キスをして、もう出発しようと立ち上がった。もう二度と見ることもないだろう、この部屋も――。
[プーッ!!! プー!!!!!]
いつの間にかバンが到着したのか、クラクションの音が聞こえた。俺はもしかしてメンバーたちが目を覚ますんじゃないかと、静かにかばんを引きずって玄関に出た。そうして玄関のドアを開けていざ出ようとすると……。
「イ・ドンヘ」
やつの声が俺を止めた。
「……どこに行く」
どう答えればいいか。
事実を言おうか、それとももう少しおまえを傷つけるようなことを言うか。
「どこに行くのかって聞いてるだろ」
「中国」
「おまえがどうして中国に行くんだ」
「俺が事務所に行きたいって言ったんだ。もっと遠い世界を見てみたいから」
「だからクソ!どうしてひとりで中国に行くんだ!!!」
「一人じゃない。ハンギョンヒョンと一緒に行く。それから、おまえの文句をちょっとやめてくれ。おまえ、知識がないことをそんなふうに他人の前でひけらかすのはあまりよくない」
「は……イ・ドンヘ」
「俺の名前がドンヘなのはわかったから、もう呼ぶのはやめてくれ」
「おまえ……イ・ドンヘじゃない。本当にイ・ドンヘじゃない……」
「今までおまえが知っていたイ・ドンヘは本当の俺じゃない。今、お前の目の前にいるイ・ドンヘが本当のイ・ドンヘだ。遅れるからもう行くよ」
そんなふうに自分の感情を押さえつけて、すべて冗談の嘘をつき、おまえをそんなむごい言葉で踏みつけて……俺は玄関のドアを開けた。
もう一歩踏み出せば本当にさよならだ。一歩……どうか、一歩さえ行けば。
「……行くな」
やつの声はまた俺を抑えた。
「恨みたいのに、それがうまくできない。いや、おまえが狂おしいほど恨めしいけど、恨めるはずがない」
最後まで俺が悪いやつだということを想起させてくれるやつの言葉に、俺はもう一度涙を飲み込んだ。
「おまえは俺を愛していないと言っただろう」
いや、違うんだ……俺はおまえを愛している。
「今から俺を愛するように努力することはできないか? それもだめなら、俺がもう少し努力しようか? どうすればいい、ドンヘ。うん?」
どうか俺を忘れてくれ……。もうこれ以上何も言わないでくれ。おまえがこんなふうにしていたら、俺は本当にお前の胸に駆けていって抱かれてしまうかもしれない。苦労してした俺の決心が、おまえのせいで崩れてしまうかもしれない。俺が崩れたら、俺たちみんなが崩れてしまうかもしれないんだ、バカ……。
「それでもだめか……?」
「……勘違い……するな。おまえを愛することなんて……ないから」
ぐっと本心を飲み込んで、そう何の意味もない無味乾燥な一言を吐き出して、すばやく宿所を出て行って、エレベーターに乗り込んだ。
ようやく我慢していた涙が突然張り裂け、滝のようにとめどなく俺の顔に流れた。
「ふっ……うぅ……ふぅぅっ……愛してる……愛してる……」
おまえと俺の愛が少し平凡な愛だったらよかったのだけれど、あるいは俺たちの愛が浅ければこんなに苦しまなくて済んだのだけれど……。
俺がいなくても元気で。俺みたいな悪いやつのことはもう忘れて。俺はおまえを忘れないけれど、それでもおまえは俺のことを忘れてくれ。若い頃に、ただ通り過ぎた思い出に過ぎないと思って、俺を忘れてくれ……。
俺が愛する人、イ・ヒョクチェ……。いたずらっぽさがいっぱいの笑みがあまりにも魅力的なイ・ヒョクチェ……。ほんの少しもじっとしていられないイ・ヒョクチェ……サッカーが大好きなイ・ヒョクチェ……イチゴ牛乳が大好きで、ラジオの前には必ず飲んでいたイ・ヒョクチェ……。眠る前にいつも俺のおでこにキスをしてくれた意・ヒョクチェ……。
……愛してる。愛してる……愛してる愛してる……愛してる。
これからは伝えられない言葉だけれど、愛してる。
おまえに二度とこの言葉を聞かせてやることはできないけれど、愛してる。
俺はいつもおまえだけを愛している。
――新婦、イ・ドンヘ君は、新郎イ・ヒョクチェ君を一生愛することを誓いますか?
――はい……誓います。
ストーカー……結局はそれが俺たちの脚を引っ張る。ぼんやりした状態のドンヘに、タバコの煙をふっとかけながら席から立ち上がり、ドンヘをソファに座らせて徐々にボタンをはずす。
「おまえは中国版スーパージュニアとして中国進出の準備をしろ。拒否したらこのままスーパージュニアは終わるかもしれない。よく考えるように」
ボタンをはずしながら話をするスマンの唇がにやりと笑い、その鼻地を聞いてはほとんどパニック状態に陥るドンヘは、そんなスマンを拒否する力さえ残っていなかった。
ソンミンヒョンの胸はとても温かく、ひさしぶりに何も考えずに安らかに眠れた。俺は一体何時間寝ていたのか、さっき朝に寝て、起きた時間は夜中の3時くらいだった。
眠ることですべてを忘れたかったようで、俺は約20時間くらい眠ってしまった。本当にこんなに長く寝たの生まれて初めてだった。
けだるい身体をほどきながら、伸びをして隣を見ると、ソンミンヒョンもぐっすり眠っていた。もしかするとソンミンヒョンもこんなに長く寝たのかと思ったが、変わっている服を見るとおそらくヒョンミンヒョンは、起きてまた夕方に寝たようだった。自分の部屋もあるのに敢えて俺の部屋で寝たのは、きっと目を覚ましたときに回りに誰もいないと怖がるんじゃないかと、俺のために配慮してのことだろう。
水でもいっぱい飲もうとへを出たが、ドアの前で何かが俺の脚にひっかかった。一体何かと見てみると、どれだけ酒を飲んだのか潰れてひっくりかえったイ・ヒョクチェだった。
前にもそうだし、今度もそうだが酒を飲まないヒョクチェに原因を提供した俺としては、また罪悪感を感じた。
寝ているイ・ヒョクチェの顔をじっと見つめながら、もう一度わっと咽喉から何かが押し寄せてきた。改めてみると鼻がかなり高くて、まつげも長いんだな、おまえ。肌もきれいだし……かっこいい。俺のヒョクチェ。毎日自分がかっこわるいってぶつぶつ言うけど、こんなにかっこいい顔をしてなんでそんなことを言っていたんだ。手をそっと伸ばして彼の頬を撫でた。あんなにやわらかかった肌がぼろぼろになっては、俺の指先に伝わってきた。
「俺、もう本当に行くよ」
また流れ出す涙が、ヒョクチェの髪を濡らした。泣かないように努力したが、しきりに何かが俺の頬の上を流れ落ちて彼の髪を濡らした。
何も知らない彼は本当にぐっすり眠っていた。これから残った俺の人生を、こんなふうにこの顔だけ見ながら生きていくことも悪くはないと思った。やつの眠っている姿をこんなふうに細かく見るのは、これで二回目だった。一回目は、もしかして忘れるんじゃないかと、俺の頭の中におまえの姿を隅々まで残しておこうとしたのだが、今日見るとまた違う顔のおまえが俺の前にいる。何度刻み付けても、完全なおまえの姿が描けない。俺はそれなりに確実にまた刻み付けた。離れた場所にいても、絶対に忘れることがないように……。
俺は今、時間が止まってずっと朝がこなければいいと思った。朝になったらすべてが変わり、俺のそばにいる人々のそばを離れ、遠い場所へいけなければならない。そしてもう、おまえの顔をしばらく見ることはできないだろう。
「ばいばい……」
ヤツの耳に、起こさないように静かに囁いた。
愛していると言ってやれば愛していることを知り……単純で、目に見えるものを信じてしまうこのバカなヒョクチェ……。バイバイ、もう本当にさよならだ――。
突然泣き声が大きな利、ヒョクチェが起きるかと思って目に見える適当な部屋に入って涙を流した。涙に洗われて、ヒョクチェの記憶が全部消えるように祈りながら……。
「うっ……ふぅ……うぅっ……ヒョクチェ……ヒョクチェ……」
ごめん。ごめん……ごめん……ごめん……愛してる。
どうしても最後に伝えられない言葉が俺の中でぐるぐる回っていた。すぐにでも外に飛び出しそうで、両手で口をぎゅっと塞いだ。
「ドンヘ」
泣いていた俺が、誰かと思ってみると、ジョンスヒョンだった。部屋の中を見てみると、俺が入ったこの部屋はジョンスヒョンの部屋だった。はじめから寝てはいなかったらしく、コンピュータをしていたようなヒョンが、泣いている俺を驚いた目で見つめていた。俺が泣くのを止めることなく、部屋の外に出て俺に水を持ってきてくれた。
「飲んで、落ち着け」
その水を受け取り、ごくごく飲むと、ようやく押し寄せてきていた感情が少し落ち着いたきがした。不思議にも、突然また腹の中が痛み出した。それでも前のようにひどくはなかったし、今日は十分に耐えられるくらいの弱い痛みだった。
「何時の飛行機だっけ?」
「7時15分。もう……あと3時間くらいか」
「ふわ……そうか。荷物は準備したか?」
「準備といっても特に……準備するのは着替えくらいだし……事務所が最大限簡単に準備すればいいって。30分後にハンギョンヒョンが乗った車が来るよ。それに乗って空港に行って、手続きを踏んだら……いつの間にか飛行機に乗る時間になっていて、そしたら俺はただ行くだけだから……」
「コンサートはどうすることにしたんだ……」
「コンサートは参加する……その前日に韓国に帰ってくるよ。コンサートのとき、中国メンバーとショーケースをする予定だって。それを起点に始まって、活動を始めるらしい……」
「そうか……」
「笑えない? 俺がスーパージュニアじゃない、別のグループで活動するんだって……。完全に中国版スーパージュニアじゃないか。韓国でのハンギョンヒョンに俺がなるんだ、中国では。残りはみんな中国人メンバーだから」
「……」
「あまりに心配しないで。俺が選んだ道だし……俺が……」
「ドンヘ」
「……うん?」
「ヒョンの前ではそんなしっかりしたようなかっこいい言葉より、おまえの本当の気持ちで泣いてもいいんだぞ」
ジョンスヒョンの最後の言葉に、俺はただ唇をかみ締めた。ああ、こいつの涙の泉は本当に壊れてしまったのか、もう何度目なのか……。
「電話、ちゃんとしろよ……」
「うん……」
「向こうに行ったら泣かないで」
「うん……」
「韓国でよくなかった記憶はみんな忘れて」
「うん……」
「……ヒョクチェのことも忘れろ」
最後までヒョンは……残酷だ。みんな俺のためを思ってのことだけど、その言葉が刃となり、俺の心臓を裂き傷つけるのはどうしようもない。
ジョンスヒョンに頼んで、ヒョクチェをジョンスヒョンの部屋に運んでもらったあと、俺は荷物をまとめるために部屋に戻った。
しばらく海外撮影がなく、そんなに人生で使うこともないと思っていた旅行かばんを取り出した。きちんと自分の下着を入れ、靴下を入れ、服を詰めた。ヒョクチェと撮った写真をかばんの中にいれながら、これは違うと思ってただ写真を抜き、引き出しの上に戻した。あの写真を持っていったら、毎日写真を見るたびにおまえのことを思い出して、逃げ出して泣いてしまうかもしれないから。
「俺がいなくても元気で」
写真の中のヒョクチェに一度キスをして、もう出発しようと立ち上がった。もう二度と見ることもないだろう、この部屋も――。
[プーッ!!! プー!!!!!]
いつの間にかバンが到着したのか、クラクションの音が聞こえた。俺はもしかしてメンバーたちが目を覚ますんじゃないかと、静かにかばんを引きずって玄関に出た。そうして玄関のドアを開けていざ出ようとすると……。
「イ・ドンヘ」
やつの声が俺を止めた。
「……どこに行く」
どう答えればいいか。
事実を言おうか、それとももう少しおまえを傷つけるようなことを言うか。
「どこに行くのかって聞いてるだろ」
「中国」
「おまえがどうして中国に行くんだ」
「俺が事務所に行きたいって言ったんだ。もっと遠い世界を見てみたいから」
「だからクソ!どうしてひとりで中国に行くんだ!!!」
「一人じゃない。ハンギョンヒョンと一緒に行く。それから、おまえの文句をちょっとやめてくれ。おまえ、知識がないことをそんなふうに他人の前でひけらかすのはあまりよくない」
「は……イ・ドンヘ」
「俺の名前がドンヘなのはわかったから、もう呼ぶのはやめてくれ」
「おまえ……イ・ドンヘじゃない。本当にイ・ドンヘじゃない……」
「今までおまえが知っていたイ・ドンヘは本当の俺じゃない。今、お前の目の前にいるイ・ドンヘが本当のイ・ドンヘだ。遅れるからもう行くよ」
そんなふうに自分の感情を押さえつけて、すべて冗談の嘘をつき、おまえをそんなむごい言葉で踏みつけて……俺は玄関のドアを開けた。
もう一歩踏み出せば本当にさよならだ。一歩……どうか、一歩さえ行けば。
「……行くな」
やつの声はまた俺を抑えた。
「恨みたいのに、それがうまくできない。いや、おまえが狂おしいほど恨めしいけど、恨めるはずがない」
最後まで俺が悪いやつだということを想起させてくれるやつの言葉に、俺はもう一度涙を飲み込んだ。
「おまえは俺を愛していないと言っただろう」
いや、違うんだ……俺はおまえを愛している。
「今から俺を愛するように努力することはできないか? それもだめなら、俺がもう少し努力しようか? どうすればいい、ドンヘ。うん?」
どうか俺を忘れてくれ……。もうこれ以上何も言わないでくれ。おまえがこんなふうにしていたら、俺は本当にお前の胸に駆けていって抱かれてしまうかもしれない。苦労してした俺の決心が、おまえのせいで崩れてしまうかもしれない。俺が崩れたら、俺たちみんなが崩れてしまうかもしれないんだ、バカ……。
「それでもだめか……?」
「……勘違い……するな。おまえを愛することなんて……ないから」
ぐっと本心を飲み込んで、そう何の意味もない無味乾燥な一言を吐き出して、すばやく宿所を出て行って、エレベーターに乗り込んだ。
ようやく我慢していた涙が突然張り裂け、滝のようにとめどなく俺の顔に流れた。
「ふっ……うぅ……ふぅぅっ……愛してる……愛してる……」
おまえと俺の愛が少し平凡な愛だったらよかったのだけれど、あるいは俺たちの愛が浅ければこんなに苦しまなくて済んだのだけれど……。
俺がいなくても元気で。俺みたいな悪いやつのことはもう忘れて。俺はおまえを忘れないけれど、それでもおまえは俺のことを忘れてくれ。若い頃に、ただ通り過ぎた思い出に過ぎないと思って、俺を忘れてくれ……。
俺が愛する人、イ・ヒョクチェ……。いたずらっぽさがいっぱいの笑みがあまりにも魅力的なイ・ヒョクチェ……。ほんの少しもじっとしていられないイ・ヒョクチェ……サッカーが大好きなイ・ヒョクチェ……イチゴ牛乳が大好きで、ラジオの前には必ず飲んでいたイ・ヒョクチェ……。眠る前にいつも俺のおでこにキスをしてくれた意・ヒョクチェ……。
……愛してる。愛してる……愛してる愛してる……愛してる。
これからは伝えられない言葉だけれど、愛してる。
おまえに二度とこの言葉を聞かせてやることはできないけれど、愛してる。
俺はいつもおまえだけを愛している。
――新婦、イ・ドンヘ君は、新郎イ・ヒョクチェ君を一生愛することを誓いますか?
――はい……誓います。
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コメント
Vooodka | URL | rVevf1aU
せつなくて
連日の更新で一気に読ませていただきました。
もうかわいそうでかわいそうで、せつなくて。
バカみたいな感想ですみません。
ドンヘ、なんとか幸せになって!(祈)
( 2011年09月08日 00:35 [Edit] )
りんたろ | URL | -
Vooodkaさん
こんにちは^^
お読みいただいてありがとうございます。
この小説は本当に切ない悲しいですよね〜><
( 2011年09月10日 20:27 )
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